新宗教運動への加入・改宗・脱プログラミング・離脱の経験
高校生向けのやさしい解説
家族がカルト的な宗教に入ってしまったとき、強引に引き離して「洗脳を解く」という介入(脱プログラミング)が行われることがあります。この論文は、韓国のテレビ番組で実際に行われた脱プログラミングの映像を専門家が分析し、それが科学的にも倫理的にも問題のある手法であることを指摘したものです。信仰の自由と保護のあいだで、どう考えるべきかを問う研究です。
概要
ラファエッラ・ディ・マルツィオ(2020)は、韓国のキリスト教系テレビ局CBSが2017年に放映した番組「新天地に囚われた人々」の最初の2エピソードを心理学的観点から批判的に分析した論文である。新宗教運動(NRM)である新天地の若い女性信者に対して実施された「脱プログラミング」の実態を隠しカメラで捉えた映像を検討し、脱プログラミングの文献・理論・著者自身の経験を参照しながら、その手法が心理的強制・違法行為に該当することを論じる。
主要概念
脱プログラミング(deprogramming)
1970-80年代の米国で反カルト運動の興隆期に広まった実践であり、新宗教運動の信者を強制的に「救出」するために家族や脱会支援者が実施する介入手法を指す。物理的拘束、睡眠妨害、繰り返しの批判的議論などを含む場合があり、米国・欧州の法的枠組みでは違法とみなされてきた経緯がある。
マインドコントロール・洗脳言説の批判
本論文は「マインドコントロール」「洗脳」という概念が科学的に疑わしいにもかかわらず、反カルト運動で政治的・感情的目的のために用いられ続けている点を批判する。マーガレット・シンガーらの理論が援用されるが、その妥当性や適用は学術的に強く争われている。
改宗・所属・離脱の過程
新宗教運動への所属は、マインドコントロールによる「操作」の結果としてのみ理解されるべきではなく、信者自身の動機・探求・コミュニティへの帰属感などが複合的に関与する自発的プロセスでもある。強制的な脱会支援は信者の心理的安全と宗教的自由を侵害するリスクがある。
強制的改宗(forced conversion)への問題提起
番組に記録された「カウンセリング」は、強制的な宗教改宗を目的とする脱プログラミングの特徴を全て備えており、著者はこれを「良い実践」として提示することの倫理的・法的問題を指摘する。
書誌情報
- 著者: Raffaella Di Marzio
- 年: 2020(掲載)
- 出典: The Journal of CESNUR, Volume 4, Issue 3, May-June 2020, pages 57-69
- access_status: raw-confirmed
- DOI: 10.26338/tjoc.2019.3.2.3