憲法制定の実践ガイド
高校生向けのやさしい解説
「新しい憲法をつくる」と聞くと、立派な学者が理想の形を一発で描くイメージがありますよね。でも現実には、いろんな立場の人が妥協しながら作るもので、唯一の正解はありません。この本は、ここ数十年で憲法をつくり直した国々(ケニア・ネパール・チュニジアなど)の経験を集めて、「こういう場面ではこんな選択肢があるよ」と現場の人に見せるための実践的な手引書です。
概要
本書はInternational IDEA(国際民主主義・選挙支援研究所)が2011年に発行した憲法制定に関する実践的ガイドである。著者はMarkus Bockenford、Nora Hedling、Winluck Wahiuほか複数の専門家。2000年代以降、ボリビア、エクアドル、ケニア、ミャンマー、ネパール、スリランカ、チュニジアなど多くの国で憲法制定が行われた経験を踏まえ、プロセスの比較知識を体系化した。「一つのモデルや青写真はない」という立場から、各国が固有の文脈で最良の妥協点を見つけることを支援するための知識基盤を提供する。本書の構成は各章が独立したセグメントとして読めるよう設計されており、原則(第2章)、人権の文化(第3章)、制度設計(第4-6章)、分権的統治(第7章)が扱われている。
主要概念
憲法制定主義(constitutionalism) 権力を制限し、市民の利益のために統治者が権力を行使するという社会契約の理念。市民が権力の本来の担い手であり、憲法はその委任の条件を定める文書とされる。
新しい憲法制定主義(new constitutionalism) 社会の最大断面(女性、若者、脆弱なグループ、周辺化されてきた集団を含む)の声を憲法制定プロセスに反映させることを目指す潮流。包摂的・民主的な正統性の確立を強調する。
憲法設計の政治性 憲法起草者は技術的な最善解を探求する学術的行為者ではなく、自らの政治的アジェンダを憲法テキストに刻もうとする政治的行為者である。したがって、生まれる文書は技術的最善解ではなく「到達可能な最良の政治的妥協」である。
プロセスとしての憲法制定 憲法制定は文書が書かれる期間だけでなく長期的・歴史的なプロセスとして理解される。文書上の規定と実際の機能が乖離する可能性(文書に書かれていることと実際に機能することは異なりうる)も強調されている。
共有された規範の国際的拡散 人権、法の支配、自由、司法の独立といった共有価値が国際機関や条約を通じて各国の憲法制定に影響を与えている。ただし、この共通性は「青写真アプローチ」の正当化には使えない——各国は固有の道を見つけなければならない。
書誌情報
- 著者: Markus Bockenford, Nora Hedling, Winluck Wahiu(編著)
- 年: 2011
- 出典: International Institute for Democracy and Electoral Assistance (International IDEA), Stockholm
- ISBN: 978-91-86565-38-1
- access_status: raw-confirmed
- 公式URL: International IDEA