昔話の形態学
高校生向けのやさしい解説
世界の昔話やおとぎ話って、登場人物や舞台が違っても「あれ、似てるな」と感じることがありますよね。プロップはロシアの民話 100 篇を分析して、どの物語も 31 種類の「働き(機能)」の組み合わせで書けること、主人公・悪役・助っ人など 7 つの役割で話が回っていることを発見しました。RPG やアニメの王道ストーリーの「型」を、言語学みたいに取り出した本です。
概要
本書はウラジーミル・プロップが1928年にロシア語で発表した民話研究の古典である(英語版は1958年初訳、1968年第2版)。プロップはアファナーシエフのロシア民話集から100篇の魔法昔話を分析対象とし、表面的に多様に見える昔話が「登場人物の機能(function)」という抽象的単位で記述できることを論証した。登場人物は変化するが機能は変わらない、という観察から、すべての魔法昔話は31の機能の特定の組み合わせと順序で構成されるという構造的命題が導かれた。本書は後の構造主義的物語論(ナラトロジー)、レヴィ=ストロースの神話分析、グレマスの行為素モデルに決定的な影響を与えた。
主要概念
機能(function) 登場人物の行為が物語の経過において持つ意味。行為の主体や動機ではなく、プロット全体における役割として抽象化される。プロップは31の機能を同定し(不在、禁止、違反、探知、情報漏洩、欺瞞、共謀、悪事/欠如、仲介、対抗開始、出発、贈与者との遭遇、主人公の試練、魔法の授受、移動、戦闘、刻印、勝利、最初の課題解決、帰還、追跡、救助、帰還の否定、偽の主張、困難な課題、課題解決、認識、偽者の露見、変身、罰、結婚)、これらが一定の順序で出現すると主張した。
物語の形態素(morpheme) 言語学の形態素にならった最小物語単位。プロップは生物学の形態学(植物や動物の形を記述する学問)の方法論を民話分析に適用し、構造の比較研究を可能にした。
7つの行為圏(登場人物類型) 機能は7種類の登場人物に分配される。悪役、贈与者(提供者)、助力者、求婚された姫(及びその父)、送り出す人、主人公、偽の主人公。同一人物が複数の役割を担うこともある。
機能の配列規則 すべての機能が毎回出現するわけではないが、出現する場合は必ず一定の順序を保つ。この「順序の不変性」がプロップの主要な発見である。
書誌情報
- 著者: Vladimir Propp
- 年: 1928(ロシア語原版)/ 1968(英語第2版)
- 出典: University of Texas Press(American Folklore Society / Indiana University Research Center in Anthropology, Folklore, and Linguistics, Publication 10)
- access_status: raw-confirmed
- 全文: Monoskop