過程と実在

高校生向けのやさしい解説

世界は「もの(物質)」でできているのではなく、「出来事の連続」でできているとホワイトヘッドは主張しました。机も人も、じつは絶えず変化しながら他のものと関係を結んでいる「プロセス」なのだという哲学です。かなり難解な本ですが、「何かが存在するとはどういうことか」という問いに真剣に向き合いたい人への挑戦状といえるかもしれません。

概要

本書はAlfred North Whiteheadが1927〜28年にエジンバラ大学で行ったギフォード講演に基づき1929年にMacmillan社から刊行した形而上学の主著である。デカルト以来の物質主義的・実体論的世界観——世界は変化しない「物質的実体」の集合である——に対して、ホワイトヘッドは世界を「現実的存在(actual entities)」の生成・消滅・関係の絶え間ないプロセスとして記述する「有機体の哲学(Philosophy of Organism)」を提示した。固定した存在ではなく生成する出来事(occasion)が実在の基本単位であるというこの視点は、20世紀の過程哲学・プロセス神学・システム論に広範な影響を与えた。

主要概念

現実的存在(Actual Entity)と現実的契機(Actual Occasion)

実在の最小単位は「物質的粒子」ではなく「現実的存在(actual entity)」である。現実的存在は固定した実体ではなく、関係の過程において生成し、成就(satisfaction)に達した後に消滅する「出来事(occasion)」である。神もまた特殊な形の現実的存在として扱われる。

把捉(Prehension)

各現実的存在は他の現実的存在を「把捉(prehension)」することで自己を構成する。把捉は物理的把捉(感覚・因果的感受)と概念的把捉(命題・可能性の評価)に分かれる。世界の連続性は現実的存在が互いを把捉しながら生成するこのプロセスによって保たれる。

合生(Concrescence)と客体的不死性(Objective Immortality)

現実的存在は他の存在を把捉しながら自己を構成していく「合生(concrescence)」のプロセスを経て、成就に至ると消滅する。しかし消滅した存在は「客体的不死性(objective immortality)」として、後続する現実的存在の把捉の素材となり続ける。過去は消えるのではなく、後続の生成の素材として永続する。

創造性・新規性・神

ホワイトヘッドの宇宙論において「創造性(creativity)」は究極的カテゴリーであり、現実的存在が単なる過去の反復ではなく新規性を帯びて生成することを可能にする。神は「原初的本性(primordial nature)」として可能性の全体を把握し、各現実的存在の合生に「目的の誘引(lure)」を与える存在として描かれる。

有機体の哲学と科学

ホワイトヘッドは近代科学の「単純な定位(simple location)」——物質は特定の時間・空間に孤立して存在するという前提——を批判する。現代物理学(相対性理論・量子力学)が示す実在の相互依存性と不確定性は、有機体の哲学の関係論的・過程論的世界観と整合すると論じる。

命題と思考の役割

有機体の哲学において「命題(propositions)」は単に「真偽」のみならず「可能性の誘引(lure for feeling)」として機能する。命題は思考・感情・行為の出発点として高次の経験を可能にする。これはホワイトヘッドの認識論が純粋な知識論ではなく、感情・意図・行為を包含する「経験の理論」であることを示す。

関連する探索キーワード

「把捉(prehension)」——各現実的存在が他の存在を感受しながら自己を構成する——は間主観性(as)の形而上学的定式化として読め、人々が互いを把捉しながら場を共に構成するプロセスと構造的に対応する。「創造性(creativity)」を究極的カテゴリーとして位置づける議論は創造の5段階モデル(cs)の形而上学的背景として参照でき、「客体的不死性」——過去は後続の生成の素材として永続する——は欠損駆動思考(ks)において過去の欠損体験が現在の探究を方向づけるという論理と共鳴する。

書誌情報

  • 著者: Alfred North Whitehead
  • 年: 1929
  • 出典: The Macmillan Company, New York(Gifford Lectures, University of Edinburgh, 1927–28)
  • access_status: raw-confirmed
  • 全文: Wikimedia Commons