植物遷移論
高校生向けのやさしい解説
山火事の後や溶岩が冷えた裸地に、どのように植物が育ちやがて森になるかを体系的に記述した1916年の生態学の古典です。クレメンツは「草→低木→森」という段階的な変化(遷移)が、その地域の気候に支配される最終的な植生(クライマックス)に必ず行き着くと主張しました。現代では「必ずひとつのゴールへ収束する」という点が修正されていますが、遷移を生態学のフレームで論じた最初の大著として今も参照されています。
概要
本書はFrederik E. Clementsが1916年にカーネギー研究所から刊行した生態学の基礎文献である。植物群落を「複雑な有機体(complex organism)」として捉え、裸地(bare area)から出発して気候的クライマックスに至る植生の連続的変化(succession)を系統的に記述・説明した。著者は1898年から約20年間にわたる北米西部の野外調査に基づき、遷移を「裸地の成因」「初期因子」「継続過程」「最終形態」に分解して分析した。植生の発生・発達・成熟・再遷移という発生論的視点を生態学に導入した点で、その後の生態学理論の礎となった。
主要概念
遷移(Succession)と群系(Formation)
遷移とは植物群落の一連の発達過程であり、単一の裸地から最終的に気候に支配されたクライマックス群落(formation)に至る。群系は特定の気候に対応する発達単位であり、有機体と同様に発生(ontogeny)と系統(phylogeny)の両面を持つとClementsは主張した。
セレ(Sere)とコセレ(Cosere)
一連の遷移段階をセレ(sere)と呼び、複数のセレが連結した地史的スケールの遷移をコセレ(cosere)と呼ぶ。各セレは反応(reaction)・安定化・再侵入といった段階を経て進む。
裸地の成因と初期因子
裸地の形成は風化・侵食・堆積・氷河・火山活動など多様な地形的・気候的プロセスによる。これらが遷移の「初期因子(initial causes)」であり、発達の方向性を決める出発条件となる。
気候クライマックスと生息地
どの地域においても最終的に遷移は気候によって支配される安定なクライマックス群落に至る。この気候クライマックス概念はClements理論の中心であり、同一気候域ではどのような出発条件からも同じクライマックスに収束すると主張された(単元クライマックス説)。後に多元クライマックス説(Tansley)によって修正される。
遷移の機能的側面
遷移は単なる種の入れ替えではなく、植生が環境(特に水分状態)を能動的に改変しながら自己を促進する「反応(reaction)」を含む。これは植生による生息地改変の能動性を強調した先駆的観点である。
書誌情報
- 著者: Frederic E. Clements
- 年: 1916
- 出典: Carnegie Institution of Washington, Publication No. 242
- access_status: raw-confirmed
- 全文: Internet Archive