ヒト自己免疫疾患のメカニズム

高校生向けのやさしい解説

本来は外敵を攻撃するはずの免疫が、なぜか自分の体を攻撃してしまう「自己免疫疾患」のしくみを解説した2015年のレビューです。関節リウマチや1型糖尿病がその例で、「攻撃する細胞」と「それを抑える細胞」のバランスが崩れることで発症します。遺伝的な体質と感染症・生活環境などが組み合わさって引き金になるため、治療には根本原因ではなく炎症を抑えることが多い現状も紹介されています。

概要

自己免疫疾患は、エフェクター免疫応答と制御性免疫応答の不均衡として捉えられる。疾患は「開始(initiation)」「増幅(propagation)」「寛解(resolution)」の3フェーズで進行し、すべてのフェーズにおいて制御機構の破綻が関与する。自己反応性リンパ球の欠損した排除または制御が自己免疫疾患の根本的な異常であり、遺伝的感受性と環境誘因の組み合わせによって発症する。本レビューの目的は、この病態の理解を深め、エフェクター応答と制御応答の正常なバランスを再建する治療戦略への応用にある。

主要概念

自己免疫疾患の3フェーズ構造

フェーズ特徴臨床的位置づけ
開始(initiation)遺伝的素因+環境誘因による自己反応性リンパ球の活性化無症状(潜在性)
増幅(propagation)自己持続的な炎症、エピトープスプレッディング、Teff/Treg不均衡臨床的発症期
寛解(resolution)細胞内抑制経路とTreg細胞による制御でエフェクター応答が一時的に抑制再発寛解の繰り返し

遺伝的感受性因子

  • 最も強い関連はHLAアレルの多型。ただし、HLAアレルがいかに自己免疫に寄与するかの機序は未解明
  • IL-23受容体(IL23R)の多型は強直性脊椎炎、クローン病、乾癬、潰瘍性大腸炎など複数の自己免疫疾患に関連。Th17経路の標的治療(抗IL-17A、抗p40モノクローナル抗体)がこれらで有効性を示す
  • 単一遺伝子疾患の例外: AIRE変異による自己免疫性多腺性症候群(APS)、FOXP3変異によるIPEX症候群はそれぞれ中枢性・末梢性寛容の破綻を直接引き起こす

環境誘因

  • 感染症(EBVとMS、歯周感染と関節リウマチなど)が自己免疫を誘発する機序として、エピトープスプレッディング、抗原補完性、過剰な自然免疫受容体活性化が提唱されている
  • 腸内細菌叢の異常(dysbiosis)が炎症性腸疾患や自動免疫疾患に関与する可能性
  • UV照射は皮膚ループスの環境誘因として明確に認識されている

制御機能の破綻

  • T細胞依存性炎症性自己免疫疾患ではエフェクターT細胞(Teff)と制御性T細胞(Treg)の不均衡が中心的役割を担う
  • SLEではB細胞寛容チェックポイントの欠陥が確認されている
  • 現在の治療(TNF-α拮抗薬など)は炎症の終末フェーズを標的としており、疾患の根本原因に対処していないため継続投与が必要になる

書誌情報

  • 著者: Michael D. Rosenblum, Kelly A. Remedios, Abul K. Abbas
  • 年: 2015
  • 出典: The Journal of Clinical Investigation, 125(6):2228-2233
  • access_status: raw-confirmed
  • DOI: 10.1038/nm.3897