GW170817:連星中性子星合体からの重力波観測
高校生向けのやさしい解説
2017年8月、二つの中性子星が合体した瞬間に生じた「重力波」と「光」が同時に地球に届き、天文学史上初めての「重力波と光の同時観測」が実現しました。この出来事から、金やプラチナなどの重い元素が中性子星の合体で生まれることが直接確かめられました——指輪の金も、かつてどこかの宇宙で起きた星同士の衝突が作ったものかもしれません。
概要
LIGOサイエンティフィックコラボレーションおよびVirgoコラボレーションが2017年に発表した論文。2017年8月17日12時41分04秒(UTC)に、アドバンストLIGO(ハンフォード、リビングストン)とアドバンストVirgoの3検出器が連星中性子星合体からの重力波信号GW170817を捕捉した。合成SNRは32.4と過去最大。合体から1.7秒後にFermi衛星がガンマ線バースト(GRB 170817A)を独立に検出したことで、連星中性子星合体と短時間ガンマ線バーストの起源関係を初めて直接実証した。その後の電磁波対応天体(キロノバ)観測との組み合わせにより、天体物理・核物理・重力・宇宙論にまたがる多分野での知見が一挙に更新された。
主要概念
重力波インスパイラル信号
二つの中性子星が互いを回る軌道が縮小していく過程(インスパイラル)で放出される重力波。周波数が時間とともに増加するチャープ信号として検出される。チャープ質量からシステムの質量組み合わせが精密に決定された。
多重メッセンジャー天文学の確立
重力波・ガンマ線・X線・可視光・赤外線・電波という複数の観測手段を同時並行で使う多重メッセンジャー天文学の実践例。それぞれの観測窓が異なる物理過程に感度を持つため、単一手段では得られない全体像が浮かび上がった。
キロノバとr過程元素合成
光学・赤外線対応天体(AT2017gfo)は、重い元素(金・プラチナなど)を合成するr過程(高速中性子捕獲過程)と整合的な光度進化を示した。連星中性子星合体が宇宙の重元素供給源であることの直接証拠となった。
光源の精密位置決定
3台の検出器のデータ統合により、28平方度という精密な天域に光源を限定。系外銀河NGC 4993が宿主銀河と同定され、独立した距離測定を可能にした。
中性子星の状態方程式への制約
潮汐変形可能性パラメータの測定が、高密度中性子星物質の状態方程式に制約を与えた。ブラックホールと異なり、中性子星は潮汐効果を受けるため波形に痕跡が残る。
書誌情報
- 著者: B. P. Abbott et al. (LIGO Scientific Collaboration and Virgo Collaboration)
- 年: 2017
- 出典: Physical Review Letters, 119, 161101
- access_status: raw-confirmed
- DOI: 10.1103/PhysRevLett.119.161101