エルニーニョと南方振動の理論
高校生向けのやさしい解説
数年に一度、太平洋の水温が変化して世界の天気が大きく乱れる「エルニーニョ」。ケインとゼビアックは海水温・風・海流の相互作用を結合させたモデルを作り、外からのランダムな力がなくてもエルニーニョが自然に繰り返されることをコンピュータで再現しました。この論文によってエルニーニョは「予測できる現象」になり、1年以上先の気候予測への道が開かれました。
概要
マーク・ケインとスティーブン・ゼビアックが1985年に発表した気候モデル論文。熱帯太平洋の海面水温(SST)・海面風・熱躍層深度の相互作用を表す結合大気・海洋モデルを構築し、ENSOが不規則な周期(3〜4年)で繰り返されるサイクルを決定論的な結合系の内部過程として再現した。外部からのランダムな強制力を仮定せずとも、熱帯太平洋域内の正のフィードバック・負のフィードバックの組み合わせがENSO変動を生成・維持することを示し、エルニーニョ予測の理論的根拠を初めて確立した。
主要概念
正のフィードバック(ビャークネス機構)
東部赤道太平洋のSST上昇が大気の加熱を強め、偏西風偏差を生む。この偏西風偏差は赤道東部の湧昇を弱め、さらにSSTを高める。このループが温暖イベント(エルニーニョ)を急速に発達させる。
赤道太平洋の熱蓄積と放電
赤道太平洋の熱コンテント(熱躍層の状態)が十分高くなったときにのみ、エルニーニョが発達できる。イベント後は熱コンテントが低下し、次のイベントまでの準備期間が生じる。この充放電サイクルがENSOの周期性をもたらす。
季節変調
平均場の季節変化(熿帯収束帯の移動など)がENSOの空間パターンと時間発展を左右する。モデルでは温暖ピークが主に年末に固定される傾向が現れ、観測されたENSOの季節ロッキングと整合した。
決定論的不規則性
モデルは完全に決定論的であるにもかかわらず、ENSOの振幅・発生タイミングが不規則になる。これはランダムノイズではなく、非線形決定論的相互作用によるカオス的ふるまいであることを示唆した。
予測可能性
決定論的な系であることは、原理的にENSOが予測可能であることを意味する。本論文はその後の季節予測研究への道を開いた。
書誌情報
- 著者: Mark A. Cane, Stephen E. Zebiak
- 年: 1985
- 出典: Science, 228, 1085-1087
- access_status: raw-confirmed
- DOI: 10.1126/science.228.4703.1085