シナジェティクス:入門

高校生向けのやさしい解説

レーザーが光る、水が対流する、生き物の模様が生まれる——これらはバラバラに見えますが、すべて同じ仕組みで起きているかもしれません。Haken は多数の要素が「協力」して自発的に秩序を作り出す現象を「シナジェティクス」という一つの枠組みで統一しました。鍵になるのは「秩序パラメータ」という概念で、系全体の動きを少数の遅い変数が支配するという発見です。物理・化学・生物・さらは経済まで、「自己組織化」を統一理論で語ろうとした挑戦的な著作です。

概要

Stuttgart 大学の Hermann Haken による著作(初版1977年、第3版1983年)。「シナジェティクス(Synergetics)」という学際的研究領域の基礎を体系的に提示する。シナジェティクスとは、多数の要素からなるシステムの「協同的な動作」によって巨視的な空間的・時間的・機能的構造が自発的に生まれるプロセスを研究する学問で、物理・化学・生物学にまたがる普遍的原理を探る。レーザー、ベナール対流、化学振動、生物形態形成などを統一的に扱う秩序パラメータの概念が中心をなす。

主要概念

秩序パラメータ(Order Parameter)

システムが相転移を経て自己組織化するとき、速く減衰する変数(安定モード)は遅く変化する変数(不安定モード)に「隷属」する。この遅い変数が秩序パラメータであり、系全体のマクロな振る舞いを支配する。「隷属原理(Slaving Principle)」として定式化される。

非平衡相転移と自己組織化

熱平衡から遠く離れたシステムに起きる相転移を分析する枠組み。エネルギー・物質の流入によって維持される非平衡定常状態から、突然新しい秩序構造が自発的に出現する現象を統一的に記述する。

確率と必然性

ランジュバン方程式・フォッカー–プランク方程式・マスター方程式を用いて、確率的要素(揺らぎ)と決定論的力学の相互作用を扱う。揺らぎが秩序形成の引き金となる役割を理論化する。

レーザーの協同現象

レーザー発振を非平衡相転移として分析し、シナジェティクスの核心的事例として位置づける。多モードレーザーから単一モードへの遷移、超短パルスの生成などを秩序パラメータの概念で統一的に記述する。

経済・社会への拡張

第3版では失業-完全雇用間の転換を非平衡相転移モデルで記述する経済モデルも収録し、シナジェティクスの概念が物理・生物以外の複雑系にも適用可能であることを示す。

カオスとの接続

1978年の第2版以降、カオス的運動(決定論的不規則性)に関する章が追加され、周期倍増分岐・間欠性・カオスへの経路も扱う範囲に含まれた。

書誌情報

  • 著者: Hermann Haken
  • 年: 1983(初版1977)
  • 出典: Springer-Verlag, Berlin Heidelberg(Springer Series in Synergetics, Vol. 1)
  • access_status: raw-confirmed
  • DOI: 10.1007/978-3-642-88338-5