読書log:老人支配国家 エマニュエル・トッド
感想
- タイトルと内容はかなり乖離してる
- トランプ以降の世界情勢について移民、コロナ対応などの各論
- 移民政策で犯しがちな過ちが参考になった
- 過去の同化政策の反省が、これからの同化政策にどう影響していくのか、視点になる。
- 家族構造が文化や制度に現れると言う視点は欲しかったもの
- 兄弟構成や長子・末っ子などはよく話題に出るけど、家族構造の文化の差は知らない
- ポスト新自由主義の新秩序のヒントになる
著者
- 人口統計と家族類系の専門家
- 説:社会のイデオロギーや個人の行動、ひいては歴史の潮流を決定づける
ユーラシア内陸に外婚制および内婚制の父系共同体家族があり、その外側のドイツや日本に直系家族があり、さらにその外側のイングランド、フランス、東南アジアに核家族が存在する。これは、父系共同体家族が最も新しく、次に直系家族が新しく、核家族が最も古い残存形態であることを表している
トッドは以上の観察から、絶対核家族のアメリカやイギリスで盛んな多文化主義を移民隔離だとして批判し、フランスの積極的な移民同化を、移民問題の唯一の解決策として提示した。また、イギリス、フランス、ドイツの移民に対する態度が全く異なることから、心性としての欧州統合は失敗すると予測した。
2000年、藤原書店の招きで来日し、国際討論会(シンポジウム)を行った。この席で、社会に慣性がある以上、日本が数十年の間にアングロサクソン的なウルトラリベラルな社会に変容するとは考えられないと述べ、それへの反応について警告している。
「今日のドイツ、日本、スウェーデンは、それぞれ非常に豊かな国であり、高齢者が多く、大変成熟した社会です。ナチ党の党員と幹部を生み出し、日本の軍国主義を支えた若くて興奮しやすい人々に満ちた社会ではもはやありません。しかしながら、一〇年、二〇年、三〇年という長期的なタームで見たとき、ドイツや日本のような社会において個人の安全を脅かすリベラリズム的な状況が続いたならば、極めて右傾化した不愉快な反応が生み出されてもおかしくないのです。」
参考:【エマニュエル・トッド - Wikipedia】 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%89
読後、「移民政策で犯しがちな過ち」を管理するための指標をAIに聞いてみた。
- 人口バランス:年齢別のホスト国住民/移民比率。
- 言語・教育:言語習得到達度、学力到達度、就学継続率。
- 労働市場:職種ミックス、内部昇進・技能移行率、賃金分布の歪み。
- 空間配置:居住の偏り指数。
- 統合成果:地域活動への参加率。
要旨
移民政策で犯しがちな過ち
- 過ち:少子化対策をおろそかにすること
- 問題:若い世代でホスト国住民と移民の人口バランスが崩れる
- 対策:双方同時に進める必要がある
- 過ち:外国人はいずれ国に帰ると思い込むこと
- 実情:定着しようとする。家族を呼び寄せる。
- 過ち:経済的現象(労働力の流動性)と考えること
- 実情:「文化的特殊性を剥奪した交換可能な個人」ではない。それぞれに個性がある。
- 過ち:多文化主義(隔離政策)を採用する
- 対策:必要なのは同化主義(フランスが採用)
- ただし時間がかかる。3世代ほどかかる
- 場所のシステム:学校・町・企業などで価値観が伝達されていく
- 対策:必要なのは同化主義(フランスが採用)
- 過ち:非熟練労働者の移民のみを増やすこと
- 問題:社会階層の下に新たな階層が生まれ、分断が強化される
- 対策:さまざまな階層の外国人を呼ぶ。階層が分散している方が同化がスムーズ
- 過ち:移民の出身国を特定の国に集中させること
- 対策:出身国を多元化する
その他
- 人口統計は嘘をつかない
- ソ連崩壊:乳幼児死亡率の上昇
- トランプ当選:中年白人死亡率の上昇
- グローバル化について
- 問題:移民問題、産業空洞化、若い世代が犠牲になる
- コロナでわかったこと:グローバル化が進んだ国ほどコロナによる高い死亡率
- 高い:個人主義的、女性の地位が高い国(核家族的:英米仏)
- GDPにこだわり、産業空洞化が起きてる
- グローバリズムの知的な敗北
- GDPにこだわり、産業空洞化が起きてる
- 低い:権威主義的、女性の地位が低い国(直系家族的:日独韓)
- 暗黙の保護主義、産業空洞化していない
- 高い:個人主義的、女性の地位が高い国(核家族的:英米仏)
- 世界の情勢
- 米国
- トランプ大統領の誕生
- 自由貿易から保護貿易へ
- 民主主義の失地回復
- 今後は教育水準の高いアジア系移民を当てにできない
- 出生率が低いため
- 社会が不安定化
- 対ロシア比較:乳幼児死亡率、自殺率、刑務所収監率が高い
- 米国の介入による混乱
- 中東から東アジアへ
- 同盟国として信頼できない米国
- トランプ大統領の誕生
- 中国の状況
- 中国が米国を凌ぐことはない
- 出生率1.3:最大人口の国なので、移民で不足をカバーすることができない
- 男女比が異常値 男子118:女子100
- 内需が弱く、輸出依存の脆弱な構造
- 中国が米国を凌ぐことはない
- 米国
- 日本の分析
- 直系家族
- 鎌倉時代に始まり江戸時代に大きく広がった。明治政府が長男相続を義務づけたことで規範として完成
- 特徴:
- 権威主義:一つの秩序の中に包摂する。同化主義的傾向
- 不平等主義:移民を異なる人間とみなす。隔離主義的傾向
- 長所:世代間継承、技術・資本の蓄積、教育水準の高さ、勤勉さ、社会的規律
- 短所:完璧主義的、変革が苦手な可能性、社会が確立すると継続性だけを重視するようになり化石化する
- イトコ婚が2割ほどある。
- ドイツに比べて高い
- 閉鎖性を表す
- 移民を受け入れないのは排外主義か?
- 完璧な状況:摩擦を起こさ座に暮らすのが快適で、それを失いたくない。
- 移民の受け入れは不完全さや無秩序を受容する必要がある。
- 同化の歴史
- アイヌや朝鮮半島の人々を同化した
- 日本に適した移民受け入れ拡大の方法
- 秩序の社会なので、決定が上から下される社会。上からの改革にあっている。
- 天皇や官僚システムで垂直的な権威を用いる。
- 当初は不安に思うかもしれないが、完璧さよりも柔軟性を失わないことを重視する。
- シルバー民主主義
- 老人の健康を守ために現役世代の活動を犠牲
- 直系家族